日本刀ができるまで
こんにちは、近藤です。
今回は少し趣を変えて、みなさんが日頃稽古で使っている竹刀や木刀のルーツである「日本刀」の歴史と、驚きの職人技を解説させて頂きます。
色々な少年漫画に出てくる「日本刀」ですが、この機会に少し勉強し、友達にウンチクを語れるようになりましょう。
1.「刀」と「剣」の違い、そして日本刀の誕生
「剣(つるぎ)」は両側に刃があり、主に打撃に適した武器ですが、「刀(かたな)」は片刃で、切る、突くに適した武器です。平安時代、奥州(東北地方)で使われていた柄がワラビの芽のように丸まった短い刀「蕨手刀(わらびてとう)」には緩やかな反りがありました。
これが馬の上から斬りつけやすい形として進化し、後の日本刀の原形になったと言われています。
- 奇跡の鉄「玉鋼」
日本刀の原料は、川でとれる「砂鉄」と、木から作る「木炭」です。これを土の炉で三日三晩燃やし続け、酸化鉄を鉄に変える伝統技法が「たたら製鉄」です。日本で唯一、島根県の奥出雲地方で今も受け継がれており、大ヒットドラマ『VIVANT』の舞台としても話題になりました。
一回のたたら製鉄(約3トン前後の鉄塊)から採れる「玉鋼(たまはがね)」は、わずか1トンほど(約3分の1)。さらにそこから選別した一握りの最高品質の部分だけが日本刀の材料となります。
- 鍛錬と「折れず、曲がらず」の構造
ご存じの刀工の親方と弟子が一組になってトンチンカンと繰り返す鍛錬ですが、玉鋼を叩き伸ばしては半分に折り重ねる「折り返し鍛錬」で不純物と余分な炭素をたたき出し(これが火花になります)、ミルフィーユのような層状にします。また事前に選別した硬い玉鋼(皮鉄)で柔らかい玉鋼(芯鉄)を包み込む二重構造にすることで、「硬いのに折れにくい」理想の刀になります。
- 何故「反り」が生まれるのか?焼き入れの科学
焼き入れ前、刀はほぼ真っ直ぐな形をしています。この後、刀工は刀身全体に粘土(焼き刃土)を塗りますが、刃側は薄く反対の棟側は厚く塗ります。その後、真っ赤に熱した刀身を水槽の中に一気に差し込む「焼き入れ」により、土が薄い刃側は水で急激に冷やされ、ミクロの結晶構造が一瞬で変化する「マルテンサイト変態」を起こします。マルテンサイト変態は、鉄をものすごく硬くすると共に、体積を膨張させる性質があります。一方、厚い土で保温された棟側は冷えるのが遅いため、マルテンサイト変態を起こさず膨張しません。結果大きく膨張して伸びる刃側が、伸びない棟側に刀身を曲げることになり、日本刀特有の美しい「反り」が生まれます。
- 五感で見極める絶妙な温度
この焼き入れの最適温度は780〜800℃前後です。温度が低すぎるとマルテンサイト変態が起きず軟らかいままになり、高すぎると過剰な冷却によって「焼き割れ」を起こします。昔の刀工は温度計がない時代から経験でこれを知っており、作業場を真っ暗にして熱した鉄が放つ「赤色の濃淡」だけを頼りに一瞬のタイミングを見極めていました。粘土の塗り方の工夫により、神秘的な「刃紋(はもん)」も浮き上がります。
- 現代科学でも解き明かせない「鎌倉時代の謎」
実は、日本刀の最高傑作は鎌倉時代の作とされており、当時の名工(正宗など)が作った刀の切れ味や美しさは、現代の高炉で作る最新の鉄や、電子顕微鏡など最先端の分析技術をもってしても未だに再現できません。どうやって700年も前の刀工達がこの高みにたどりついたのか、驚嘆としか言いようがありません。日本人恐るべし。
一本の至高の日本刀が完成するまでには、数え切れないほどの失敗と、途方もない年月をかけた先人たちの試行錯誤の繰り返しがあったことと思います。
剣道の稽古も同じです。目の前の勝った負けたに一喜一憂せず、うまくいかない時があっても諦めず、粘り強く、地道に時間をかけて努力を積み重ねていくこと。このプロセスこそが尊い成長を生み出します。